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藤原吉弘

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エッセー

ある日の優先席

藤原吉弘                                   投稿日2013/03/11


桜

 日曜日の午前、湘南台で小田急の快速急行新宿行きに乗った。乗車位置は、10両編成の先頭車両、4番目の扉だった。その扉の後ろ側はすべてが優先席だった。休日のこの時間帯、先頭車両はいつもガラガラだが、この日も優先席は8席のうち1つが埋まっているだけだった。このお話はそこが舞台となった。話を進めやすくするため、その優先席ゾーンの座席に名前を付けてみた。

 

  進行方向左側4席は扉側からA席、B席、C席、D席と呼ぶことにし、向かい側4席も扉側からE、F、G、H、と呼ぶことにする。Aには私の家内が、Bには私が、Cは空席、Dには70代後半と見受けられる婦人が座っていた。Eには20歳前後の女性、Fには60代半ばと見受けられる婦人が、Gは空席、そしてHには70歳前後と見受けられる婦人が座っていた。

 

  湘南台を発車してすぐ、Fの婦人がメールを始めた。このゾーンでは携帯電話の電源は切らなければならないことになっているが、車内は空いているので見て見ぬふりをした。次の大和からは5~6人がこのゾーンに乗り込んできた。私の隣、Cには30代と見受けられる男性が2歳くらいの男児を抱いて座った。その奥さんと見受けられる人は、乳母車を左側において男性の前に立った。

 

  町田で松葉づえの婦人が乗ってきてFの婦人の前に立った。発車後もそのまわりの人は席を譲る気配を見せない。私は立ちあがり、その松葉づえの人の背中をトントンと指でたたき「どーぞ」と席を譲った。その婦人は膝を曲げることができないらしく足を伸ばして座った。私はA席の家内の前に立った。

 

  その数分後、Dの婦人が携帯電話を取り出し、「電話をくれた?」といって会話を始めた。みんな眉をひそめたがしばらくは誰も何も言わなかった。そのうち、Dの対面にあたるHの婦人が、乳母車越しにジェスチャーを混じえて注意した。それでもDの婦人は電話はやめようとしなかった。突然、私の口から大きな声が出た。「ここでは、電源を切ることになっているのですよ」。

 

  その数分後、最初にメールをやっていたFの婦人が携帯電話を取り出し会話を始めた。つい先ほどの騒ぎは知っているはずなのに。「電源を切れと書いてあるでしょう!」。私は思わず大声を出してしまった。

 

  電車は新百合ヶ丘に着き、家族連れのCの男性は降りて行った。席を譲っていたBの松葉づえの婦人は、Cに移り私にBの席を空けてくれた。その駅からは別の松葉づえの男性が乗ってきた。私はとっさに立とうとしたが、その男性はまっすぐFの女性の前に行った。その女性は、今度はすぐ席を譲った。

 

  あとの数十分は何事もなく過ぎた。家内は、着いたらすぐ「ナイフで刺されでもしたらどうするの。もうやめてよ!」。みなさんならどうしますか?

 

 (2013年3月11日 藤原吉弘)

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