先月受けた大腸がん検診の便の潜血検査で、“潜血反応があり精密検査が必要です”という判定が下った。精密検査とは内視鏡による直接検査のことだ。総合健康診断を受けたその医院で、専門の検査機関を紹介された。
本番一週間前、その機関で医師の説明と注意を受け、「マグコロールP」という緩下剤を渡された。本番前夜、寝る前にその緩下剤の粉末をコップ一杯の水に溶かして飲んだ。朝までに3回トイレに起きた。下剤が利いている。朝出かけるまでにさらに2回行った。もう、腹の中にはなにも残っていないだろう。
当日朝8時半、受付で「大腸内視鏡検査問診票・検査同意書」を提出した。最初は腹部のレントゲン撮影だった。腸閉塞などの病気が疑われる場合は、検査はできないという。結果はOK、いよいよ本格的な検査準備に入った。
「ニフレック」という腸管洗浄剤を2リットル、9時半ごろから約2時間をかけて服用した。11時半までに6回トイレに行った。便の濁りやカスはすっかり無くなり、看護師からOKが出て準備は完了した。検査開始は午後1時半からの予定だ。待つ間、空腹でかなり辛い思いをした。
内視鏡がお尻から入れられ、大腸の一番奥、盲腸のところまで挿入された。大腸の曲がっている部分を通過するときは、ほんの数回だがかなりの苦痛を伴った。空気が送り込まれ、さらに不快感が増した。検査の様子は、終始モニター画面に映しだされている。精密な検査は引き返すときに行うそうだ。
カメラをゆっくりと後退させながら腸の壁を念入りに点検していく。要所、要所で写真が撮られた。腸の内部は高齢者とは思えないほどきれいだ。疑わしい所はまったく見当たらない。しいていえば、ごく小さな良性のポリープが一つだけ見つかっただけ。病理検査のためのサンプル採集は、もちろん行われなかった。検査は30分弱で終わった。それにしても、お尻がひりひりする。
“大山鳴動ゴキブリ一匹”というところだった。できれば、もう二度と精密検査は受けたくない。帰宅して、最初に受けた簡易検査の判定結果を再度点検してみた。そこには、1回目+、2回目-と表示されていた。そして検査結果の欄では、一度「異常ありません」にチェックが入り、それを訂正した上で、あらためて「精密検査が必要です」にチェックがつけられていた。
大腸内視鏡検査に伴う偶発症は、日本の全国集計報告では0.06%だそうだ。裁判では“疑わしきは罰せず”が鉄則のようだが、この健診では“疑わしきはとことん精密検査”が貫かれているようだ。精密検査を受ける側にとって、肉体的、精神的、時間的、そして経済的負担は決して軽くはない。受診者の身になって、もう少し簡易検査の精度をあげられないものだろうか。
(2012年8月30日 藤原吉弘)