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藤原吉弘

藤原吉弘

前東和町町人会会長


エッセー

ゴキブリ

藤原吉弘                                     投稿日2017/08/31


hibiscus
 

 もう10年くらい前になるだろうか、わが家に初めてゴキブリが1匹現れた。家を新築して以来およそ四半世紀ぶりのことである。さいわい、そのゴキブリはすぐ退治することができたが、1匹見つかれば10匹はいるはずだと大騒ぎになった。さっそく、「ごきぶりホイホイ」を買ってきて屋内の各所に仕掛けた。

 

 しかし、10日経っても20日たっても、その罠にゴキブリが掛かることはなかった。「たまたま、わが家に迷い込んできただけだったのかなあ!」と、邪魔者扱いしていたボール紙製の罠を片づけることにした。わが家では、シロアリ対策用の薬剤の効果が、まだ持続しているのかもしれないと思いながら・・。

 

 あれから、およそ10年が経った。ある晩、居間でのろのろと歩いているゴキブリを見かけた。さいわい、履いているスリッパですぐ退治することができた。それから1カ月、今度は台所でそれを見つけた。またも素早く叩くことができた。いよいよ、ゴキブリが本格的に進出してきたようだ。

 

 さっそく、押し入れの奥に仕舞ってあったあの罠を探し出してきた。いろいろチェックしてみたが、効力にはなんの問題もないようなので屋内の要所数カ所に仕掛けた。今度は何匹か掛かってくれるかもしれない。しかし、あれから数カ月、期待もむなしく“お客さま”はついに現れてくれることはなかった。

 

 そのゴキブリは、生き物の中でも生命力が格段に強いと考えられている。全世界で核戦争があっても、ゴキブリだけは生き残れるだろうといわれている。彼らは、餌はもとより水がなくても30日~40日は生きられる。なんでも、体内に共生する微生物を利用して、“核燃料サイクル”にも似たリサイクルシステムが出来上がっており、楽々と生き延びることができるのだそうだ。

 

 そんな生命力の強さにあやかろうというのだろうか、とくに海外では、ペットとして、あるいは食用として利用する例も多いという。彼らは、特定の病気を媒介することはないので、飼育の環境さえ清潔に維持できればそれも十分に可能なようだ。ただ、台所などの住環境に棲みついているものは、有害物質が体内に蓄積されている可能性が高く、極めて危険と考えた方がよさそうだ。

 

 それにしても、日本ではなんであんなに彼らのことを忌み嫌うのだろう。私もそうだが、彼らのことを見かけると、ほとんど反射的に叩くなりして殺してしまう。そのための罠や薬剤もたくさん売られている。しかし、よく考えてみると、コウロギやゲンゴロウなどと、色や形も大して変わりはないはずである。

 

 そうはいっても、やっぱりゴキブリには棲みついてほしくない。今回の事件では、結局新しいお客さまにお目に掛かることはできなかったが、未利用の「ごきぶりホイホイ」は次のチャンスまでしっかり保管しておくことにした。

 
 

(2017年8月31日 藤原吉弘)

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