今年は巳年、そのキャラクターは蛇である。ヘビというと、あまりいいイメージは浮かんでこない。気持が悪い、毒がある、などなどプラスイメージはない。しかし、あれこれいう資格も、またない。そう、もう何十年も見かけたことがないのだから。生存数が激減したのだろうか、近所にいないだけなのだろうか?
本格的に見かけたのは、後にも先にもジャパン・スネークセンターで見学したときだけである。現役のころ、桐生に出張した帰りに、その近くにあるそのセンターに寄せてもらったのである。しかし、それすらもう数十年も前になる。本格的な記憶は子供のころの、もう70年近くも遡らなければならない。当時、ふるさとでよく見かけたのはヤマカガシ、アオダイショウ、そして、噛まれると大変なことになるマムシである。そのころのわが家では、よくネズミが出た。わが家に限らず、どんな立派な家にもそれは棲みついていた。夜になると、天井を駆け回る音がした。そんなとき、ザーザーという音も聞こえてくることがあった。アオダイショウが、ネズミを追っかけている音だと聞かされていた。
あるとき、納屋の土間に巨大なアオダイショウが横たわって死んでいた。腹部の中央部を膨らませたまま・・。どうやら、死んだねずみを食べてしまったらしい。そういえば、その前日、ネズミ取りの毒饅頭を仕掛けておいたのだが、それを食べたネズミをアオダイショウが呑み込んでしまったらしい。彼らはネズミを捕る、いわば“益蛇”とみられていただけに惜しいことをした。
ヤマカガシや、方言で“ハメ”と呼んでいた毒もちのマムシは、田圃の畦道ならどこででも見かけることができた。ヤマカガシは先方から逃げていくので怖くはなかったが、マムシは相手から飛びかかってくることもあるので、そんな場所に行くときは細心の注意が必要だった。さいわい、噛まれた経験はないし、周りにもそんな不幸に見舞われた人はいなかった。
こうしたヘビたちは、トカゲからの分化と考えられ、世界で3千種類いるそうだ。耳は退化し、代わりに地面の振動を下顎で感知する。視力は概して弱く、退化したものさえいる。足の退化した彼らの移動方法はもちろん蛇行や横ばいに特徴があるが、腹筋を動かして直進することもできる。縁あって、十二支の一員となり、人との関わりも深いので、これからも上手なお付き合いが必要である。
ところで、蛇にまつわる諺もたくさんある。中でも、干支との関連で興味深いのが“竜頭蛇尾”である。「頭=前半は立派だが、尻尾=後半は尻すぼみとなる」という意味だ。前年が龍で今年が蛇のこの2年間にまたがるプロジェクトがあるとすれば、まさにそれにあてはまるリスクを背負っている。龍年に発足し蛇年に2年目を迎える内閣はもちろん、国民みんなで心して巳年をガンバロウ!
(2024年01月04日 藤原吉弘)