年は越す?年の瀬は渡る?いずれにしても、越すに越せない、渡るに渡れない、惨憺たる大晦日となった。「紅白」も飽きたので、残りはビデオで、元旦の昼間にででもゆっくりと見ることにしよう。そう思って、風呂に入ることにした。ところが、浴槽に浸かっている最中に電灯が消えた。家内に聞いたら家中が真っ暗だという。どうやら、暖房機器の使いすぎでブレーカーが落ちたらしい。
ブレーカーを元に戻そうとしたがもどらない。過去に数度経験していたが、今度ばかりは思うようにならなかった。こうなったら“会社”に頼むしかない。会社とは、電力会社ではなくガス会社の方である。昨年から電気とガスの一括契約が可能となり、契約をガス会社の方に統合したためである。
あれこれ調べて、とにかくガス会社の窓口を探してみた。暗闇の中で懐中電灯を頼りにやることなので、なかなかうまく運ばない。おまけに、停電になったために固定電話は使い物にならない。やっと探し当てた先もまったく要領を得なかった。そして、別の窓口を紹介してもらいやっと話が通じるようになった。
その窓口は、いまから修理業者を探しますといってくれた。しかし、大晦日の真夜中なので時間がかかりますという。風呂上がりで薄着のまま、暖房はすべて止まって寒さが身にしみるようになってきた。しばらくして返事がきた。明日、元旦の夕方にはお伺いできそうです。それまで辛抱するしかないか・・。
その窓口の担当と、あれこれ相談し直した。契約先のガス会社ではなく、元の電力会社に頼んだ方が手っ取り早いのではないかということになった。連絡先も一緒に教えてくれた。電力会社にはすぐ連絡がついた。今、一軒取組中なので、終わりしだいお伺いします。午前1時ごろになると思いますとの返事だった。
しんしんと冷えてくる中を、布団にくるまって耳を澄ませるようにして待った。停電で、玄関チャイムも作動しない。クラクションでも激しく鳴らしてくれれば気がつくが、玄関ドアを手で叩いたくらいでは分からないのではないか。体が冷えてガタガタしていたが、とにかく眠らないよう気を張っていた。
やがて、エンジン音が伝わってきた。ドアを叩く音もした。遊行寺の除夜の鐘はいつの間にか終わっていた。作業は当該部分の機器を取り替えるだけで、午前1時すぎには終わった。部品の劣化によるもので、修理代は請求しないという。これで、やっと年を越せる。やっと年の瀬を渡ることができる!
ところで、この事例で電気とガスが逆だったらどうなるだろう。電力会社が、ガスの契約窓口にもなれるようになったのだ。ガス漏れで連絡したら、「明日の午後には伺えます」と返事されたらどうなるだろう。それはともかく、楽しみにしていた紅白の後半部分は、もちろんビデオには撮れていなかった。
(2021年1月1日 藤原吉弘)