実家の近くの共同墓地には、先祖代々の立派なお墓がある。それを、これからもちゃんと守っていかなければならないと思っている。その一方、遠く離れたところに住み、年齢を重ねていくとやがて守りきれなくなるのではないかという心配もある。そうかといって、それを次世代に期待するのは、実態からいってあまりにも酷である。残された時間だけはどんどん少なくなっていく。
そんな折、市営墓地の追加募集があった。募集数はわずかに50区画、毎年希望者が殺到し高倍率の抽選になるという。先祖伝来のお墓を守り通すか、あるいは居住地の近くに改葬するか、はたまた両方にお墓を持つべきなのか。お墓についての悩みは尽きないが、とにかく現地を見に行くことにした。
市の西部、ニュータウンの建設と歩調を合わせて、40数年前に拓かれた共同墓地である。広さは約37万平米、ざっと日比谷公園の2.3倍はある。敷地の半分以上が斎場や道路あるいは緑地に当てられ、個人専用のスペースは全体の3割あまりに過ぎない。ゆったりとしていて、まさに公園といっても過言ではない。現に、途中でウォーキングをしている近所の知り合いに出会った。
個人の専用スペースは4平米と6平米があるが、小さい方の区画が大部分を占めている。区画数は公表されてはいないが、総面積と専用スペースの割合から見るとざっと2万5千基分はありそうだ。お墓のスタイルには、横長墓石に芝生敷きの西洋式と、縦長墓石の立つ伝統的な日本式とがある。
ところどころに、虫食い状に空きスペースがある。全体の5パーセントくらいは、雑草の生い茂った空き地のままだ。開園の時に取得した権利所有者が、管理料は払いながらも未利用のまま放置しているのだそうだ。追加募集の対象になったのは、それらの内なんらかの事情で権利放棄された場所らしい。
当初聞いた話では、追加募集の対象となるのは改葬して他へ移した後地といわれていたが、大半はどうみても最初から使われた形跡はない。開園当時は、特別の制約条件を設けなかったために、市民の目から見れば不公平な現象がいまも続く結果となったようだ。
もし、万一抽選に当たったら、永代使用料72万円と管理料年6千円あまりが必要になる。墓所の形式は伝統的なものを選んだので、墓石には相当な費用がかかりそうだ。お骨を納めることのできる範囲は親兄弟までで、祖父母以前は不可となっているので、それらの難題をどうクリアしていくか。さらにその先、改葬にあたっての具体的な手続きはどう進めればいいのだろう。
抽選に当たる確率は小さいが、当たったら当たったで、悩みはどんどん膨らんでいきそうだ。
(2013年10月20日 藤原吉弘)