okikamuro island fan club, 沖家室島ファンクラブ|Kamuro party かむろ会

藤原吉弘

藤原吉弘

前東和町町人会会長


エッセー

傘寿を祝い合う会

藤原吉弘                                     投稿日2018/09/27


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 今夜は十五夜、それも中秋の名月のはずだ。そう思いつつ、岩国空港からレンタカーでふる里へと向かった。しかし、途中から雨が降り出した。本当の満月は明日のはずだから、楽しみはそれまで取っておこう。そんなことより、これから中学時代の同級生たちに会う楽しみが待っている。

 

 12時半ごろ友人の実家に着いた。すでに全員が揃い、昼食はあらかた食べ終わっていた。「あゝ、遠いところをよく帰ってきたな!」。みんなに迎えられて焼き肉弁当にかぶりついた。「アルコールは一切ないよ。その代わり、彼岸だからおはぎを用意しておいたよ。あとでコーヒーも出すよ」。

 

 みんなで揃うのはこれが最後という“傘寿を祝い合う会”には、こうして溶け込んでいった。昭和29年に、中学校をそろって卒業した121名は、今年度中に全員が80歳になる。すでに37名が物故したという。幹事が把握しているだけでそうなのだから、実際にはもっと多くの人が旅立っているかもしれない。

 

 今回参加したのは、卒業生全員の一割に当たる12名だった。地元3名、準地元6名、関西地区から2名そして関東から私1名が加わった。昨年、“今回が最後”として同じメンバーで集まったが、関西地区の2人から、どうしても傘寿のお祝い会をみんなでやりたいと強い要望があったのだそうだ。

 

 これが最後、と言い古された条件をつけて結局開催されることになったこの同窓会。老後の出費に備えて会費は“野口英世”さん1枚、道中のリスクを回避するためお酒はナシ、老人は食が細いので食事はコンビニ弁当程度、そして会場は普段空き家になっている幹事の実家という質素なものだった。

 

 「それにしてもよく帰ってきたな。たった1000円の昼食会に、何万円も出して・・」。「それだけの価値があると思うから帰ってきたんだよ」。途中でこんな会話が交された。古い友達との絆、ふる里への深い想い、それらを満たせるのは帰省してみんなに会うしかない。やはりお金で買える話では、もちろんない。

 

 この夜、実家近くの民宿でお世話になった。ふる里の海の幸はまた格別だった。翌朝、食事を終えるころ、あれだけぐずついていた空に陽光が差し始めた。あらためて、前日お世話になった友人宅にお礼に行った。体調不良で参加できなかった同級生宅も見舞った。数少なくなってきた親戚にも挨拶に立ち寄った。

 

 思いつく用件はすべて片付け、もと来た道を羽田へと引き返した。途中から、機体は秋雨前線に翻弄されはじめた。それでも、前日の思い出にゆったりと浸りながら、このようなチャンスが再び訪れることを念じた。

 

 到着地は、すっかり雨になっていた。前日繰り延べとなった中秋の名月は、結局、来年までお預けとなってしまった。

 
 

(2018年9月26日 藤原吉弘)

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